1982年ごろのシンセの多くは、押さえた音をリズミカルに動かすのに LFO かシーケンサーが必要でした。Polyvox(Polivoks/Поливокс、ポリヴォクス)は、2つのエンベロープのそれぞれにレバーがあり、エンベロープそのものを繰り返すパルスに変えられます。1つの鍵盤を押さえるだけで、フィルターがうねったり、音量が刻まれたりする。2つのエンベロープの速さを変えれば、互いにずれながら鳴ります。
ここでは周期モードの仕組み、それを止めてしまう唯一の設定、曲に合わせる方法を、私たちの再構築版 Duovox で見ていきます。スクリーンショットはすべてプラグインのもの、プレイヤーはすべてプラグインのレンダリングです。このページに出てくるループの速さは、レンダリングした音を測った値です。
周期アタックディケイサステイン 0エンベロープ 3.6クジミンが作ったもの、その理由
ウラジーミル・クジミンはこの楽器についての記事(ロシア語)で、エンベロープのモードスイッチをこの楽器の「仕掛け」のひとつに数えています。ワンショットの位置では、鍵盤を弾くと普通の ADSR になります。周期の位置でサステインつまみを 0 にすると、エンベロープはアタックタイムとディケイタイムを足した周期で繰り返し、その形は2つの比率で決まります。
クジミンが指摘しているのは、繰り返しが鍵盤を押した瞬間から始まるので、音は必ずアタックから始まり、谷間から鳴り出すことがない、という点です。普通の LFO で音量を刻むと、そうなってしまいます。彼はループする2つのエンベロープを、モジュレーターとは別の、フィルター用とアンプ用の2つの追加のモジュレーション源と数えていました。
パネルでは、このレバーに РЕЖИМ ГЕНЕРАТОРА ОГИБАЮЩЕЙ(エンベロープ・ジェネレーターのモード)と書かれています。上の位置はピークが1つのアイコン、下の位置はピークが2つ(ΛΛ)のアイコンです。Duovox でもレバーはオリジナルと同じ場所にあります。FILTER プレートの右上と、AMPLIFIER プレートの中央です。
ΛΛ 周期2.52.50フィルターをループさせる
BASS バンクから Looping Wobble を読み込むか、一から組みます。16' のノコギリ波を2つ、CUTOFF は低め(約 1.3)、RESONANCE は 3.7 前後、ENVELOPE は 3.6。フィルターエンベロープの ATTACK と DECAY をどちらも 2.5 前後に、SUSTAIN を 0 にします。そしてフィルターのエンベロープレバーを下げ、ピーク2つのアイコンに合わせます。
ワンショットでは、フィルターは1音につき1回開いて落ち着きます。周期にすると、押さえているあいだずっと開いたり閉じたりを繰り返します。このクリップではフィルターが閉じたままにならないので、平均の明るさが約1,100 Hz から1,600 Hz に上がっていました。アンプエンベロープはワンショットのままサステイン全開なので、音量は一定で、動くのは音色だけです。
アタック+ディケイが周期
ループの速さを決めるのは、ふだんは音の形を作っている2つのつまみです。このプレイヤーでは、フィルターエンベロープの ATTACK と DECAY を一緒に回します。鍵盤を2つ続けて弾いていて、2つ目を押したところでループがアタックから始まり直します。
各ポジションで周期を測りました。1.5 では1周期0.06秒で、ザラついたブザーのように聴こえる速さです。1.9 で0.1秒、2.3 で0.16秒、2.5 で0.22秒(プリセットの値)、2.9 で0.33秒、3.3 で0.56秒、3.7 でほぼ1秒。エンベロープのタイムはつまみに対してエクスポネンシャルなので、範囲の大部分はつまみの上の3分の1に詰まっています。リズムとして聴こえるうねりがほしいなら、2 から 3 のあいだにとどめてください。
アタックとディケイの比率で形が決まります。アタック MIN で長めのディケイなら、パッと開いて落ちるノコギリ波の形になり、はじいたように聴こえます。アタックとディケイが同じなら三角波で、なめらかな「ワウ」に。アタックのほうが長ければ、ゆっくり上がってストンと落ちます。etheroneph のレトロ記事は、この楽器のエンベロープが猫の鳴き声のような音を出すと書いています。RHYTHM バンクの Meow Sequence は、フィルターのアタックを 2.7 にして、その形をループさせたものです。
サステインは必ずゼロ
誰もが一度はつまずくのがここです。エンベロープが次のアタックを始めるのは、ディケイがほぼゼロまで落ちたときだけ。サステインが少しでもあるとディケイはその手前で止まり、エンベロープはサステインのレベルにとどまって、ループは1周で終わります。クジミンの記事も、周期モードはサステインつまみが 0 のときに働く、とはっきり書いています。
このパッチで、押さえた音の明るさがどれだけ揺れるかを測りました。サステイン 0 では、スペクトル重心が約1,100 Hz の幅で動きます。0.6 ではその幅が約120 Hz まで縮み、ループは止まっています。3 では最初の1周のあと、フィルターがサステインのレベルに落ち着きます。Duovox ではパネルの目盛りで約 0.2 が境目なので、ゼロに見えて実はわずかに残っているつまみでも、ループは止まってしまいます。左いっぱいまで回してください。
鍵盤を離したあとはリリースが効きます。ループが止まり、エンベロープはリリースの速さで下がっていくので、リリースを長くすればリズムが終わったあとに余韻が残ります。
フィルターのループ、アンプのループ、両方
レバーはエンベロープごとに付いています。フィルターエンベロープをループさせれば音色が動き、アンプエンベロープをループさせればゲートのように音量が刻まれます。両方を違う速さでループさせると、1つの音に2つのリズムが乗ります。Gordon Reid は2010年の Sound On Sound の回顧記事で、これをこの楽器からポリリズムを引き出す方法として挙げています。
周期ディケイ 2.3ディケイ 2.80周期EXPERIMENTAL パックの Three Against Two は、フィルターをディケイ 2.8、アンプをディケイ 2.3 でループさせていて、どちらもアタック MIN、サステイン 0 です。プレイヤーではレバーを1本ずつワンショットに戻し、それぞれのループを単独で、そのあと両方一緒に聴けるようにしています。アンプがループする2つのクリップは、フィルターだけのものより7から8 dB 小さくなります。1周期ごとに、音量が無音近くまで下がる時間があるからです。
レンダリングを測ると、フィルターは0.195秒ごと、アンプは0.108秒ごとにループしていました。フィルター5周期が0.975秒、アンプ9周期が0.972秒なので、2つを合わせたパターンはおよそ1秒に1回ひと回りし、その中でアクセントの位置が動いていきます。きっちり3対2にしたいなら、アンプの DECAY を 2.5 のわずかに手前まで上げてください。アンプのループが0.128秒になり、フィルターの0.195秒に対して比率1.52になります。
鍵盤を弾くたびに2つのエンベロープがアタックから始まり直すので、どの音でもパターンは同じところから始まります。ループするパッチでベースラインを弾くと、1音ごとにリズムがリセットされるリフになります。音が変わってもループを途切れさせたくないなら、リアパネルの LEGATO をオンに。新しい鍵盤はエンベロープを始め直さずに、音程だけを変えるようになります。
耳で曲に合わせる
オリジナルでも Duovox でも、ループは DAW のテンポを何も知りません。それも音の一部です。うねりは音符のほうに属していて、ビートから少しずれて乗ることもあります。グリッドに合わせたいときに回すのは、アンプのディケイです。METAL パックの Gated Sub 16ths はアンプだけをループさせていて、アタックは 0.5、サステインは 0 です。
測った周期と、それがちょうど16分音符になるテンポです。
| アンプのディケイ | 1周期 | 16分音符になるテンポ |
|---|---|---|
| 1.8 | 0.064 秒 | 234 bpm |
| 2.0 | 0.077 秒 | 195 bpm |
| 2.2 | 0.096 秒 | 156 bpm |
| 2.4 | 0.122 秒 | 123 bpm |
| 2.5 | 0.143 秒 | 105 bpm |
| 2.7 | 0.171 秒 | 88 bpm |
プリセットは 2.2 で、約156 bpm の16分音符にあたります。120 bpm の曲なら 2.4 から始めて、刻みがグリッドに乗るまで少しずつ動かしてください。同じテンポで8分音符にしたいなら、さらに回して周期を2倍にします。ループは鍵盤ごとに始まり直すので、小さなずれが音をまたいで積み重なることはありません。
GATE ON:鍵盤なしでループさせる
アンプのプレートの最後のコントロールは、オリジナルでは ВКЛ.(オン)、Duovox では GATE ON と書かれたレバーです。クジミンはこれを、鍵盤が押されているかのように、すべてのブロックにゲート信号だけを送るスイッチだと説明しています。これで演奏者の手が空き、長い音やエフェクトに使えるわけです。それまでミュージシャンは、鍵盤におもりを載せて同じことをしていることが多かった、とも書き添えています。
0PeriodicGATE ON2つのエンベロープをループさせたまま GATE ON にすると、最後に弾いた音で、楽器がひとりでにパターンを鳴らし続けます。プレイヤーでは最初に1回、4秒後にもう1回、鍵盤を軽く叩いています。ゲートホールドなしでは2回のあいだは無音、ありならそのあいだもずっとパターンが鳴り、2回目のタップで始まり直します。
パターンは勝手に続くので、鳴らしたままパネルを操作できます。CUTOFF をスイープしたり、ディケイを変えたり、NOISE を足したり。ハードウェアのドローンやマシンノイズの多くは、こうやって作られていました。
ファクトリーバンクの7つのループ
押さえた3つの音を、エンベロープの片方か両方をループさせる7つのプリセットで鳴らしています。どれもモジュレーターやホストのシーケンサーは使っていません。
| プリセット | ループするもの | 測った周期 |
|---|---|---|
| Looping Wobble | フィルター | 0.215 秒 |
| Pseudo-Arp | フィルターとアンプ | 0.093 秒と 0.17 秒 |
| Piston Bass | フィルター | 0.08 秒 |
| Meow Sequence | フィルター(遅いアタック) | 0.235 秒 |
| Three Against Two | フィルターとアンプ | 0.195 秒と 0.108 秒 |
| Gated Sub 16ths | アンプ | 0.095 秒 |
| Sixteenth Gate Bass | アンプ | 0.081 秒 |
うねりならフィルターのレバーを下に、ゲートならアンプのレバーを下に、パターンなら両方。
ループさせるエンベロープすべてで。そうしないと1周して止まります。
リズムなら 2 から 3 あたり、ブザーなら 1.5 未満、ゆっくりしたスイープなら 3.3 より上。
はじく音ならアタック短め、三角波なら同じ長さ、猫の鳴き声ならアタック長め。
鍵盤なしで回しておきたいなら。両手はカットオフのために空けておけます。
ループするフィルターエンベロープは、1秒に何度もフィルターを全域にわたって動かします。だからレゾナンスが高いときのフィルターのふるまいが、ここで効いてきます。それはフィルターのチュートリアルで扱っています。1つのパッチから2つのパートを引き出すもうひとつの方法は、デュオフォニックです。

- 1982年のパネルをつまみ単位で完全再現。フィルターの叫び、ループするエンベロープ、デュオフォニックも
- 2チップ・フィルターを4倍/8倍オーバーサンプリングでモデル化し、実機の録音で校正
- 10バンクと5パックに257プリセット、ベースやリードやスクリームを作る GEN ボタン
- 1982年の実機にはない機能も:ポリモード、ベロシティ、ピッチベンド、ドリフト、リアパネル