Polyvox(Polivoks/Поливокс、ポリヴォクス)の音として語られるものの多くは、1枚の基板から来ています。フィルターです。大きな信号を入れれば歪み、レゾナンスを上げればスピーカーを飛ばすことなく叫び、何も入れなければ音程どおりに口笛を吹く。そのすべては、ウラジーミル・クジミンがあるソ連製オペアンプの技術仕様書を隅々まで読んで見つけた、ひとつの細かな事実にさかのぼります。
このページでは、まずそのフィルターが何なのかを説明し、それから私たちの再構築版 Duovox でコントロールを一つずつ見ていきます。スクリーンショットはすべてプラグインのもの、プレイヤーはすべてプラグインのレンダリングです。プレイヤーの説明で「明るくなった」「小さくなった」と書いているところは、クリップを実際に測っています。
LPカットオフ 2.7レゾナンス MAXVCO I · 6VCO II · 6オペアンプ2つ、コンデンサーなし
いきさつはクジミン自身がこの楽器についての記事(ロシア語)に書いています。可聴域全体でチューニングできるフィルターを探していた彼は、プログラマブル・オペアンプ К140УД12 の仕様の中に、ある記述を見つけました。フィードバックをかけずに使うと、帯域幅が制御電流に比例して変わる。そう使ったオペアンプは、それだけで積分器であり、しかも電流で制御できる積分器です。ステートバリアブル・フィルターに必要な積分器は2つなので、チップ2つと抵抗がいくつかあれば足りました。積分用のコンデンサーは、チップに内蔵されているものです。
ブレッドボードを見せられた同僚のイーゴリ・ミロノフは、コンデンサーなしで動くとは信じられず、隠したコンデンサーがないか基板の裏をのぞき込んだそうです。簡略化した回路の出力は、普通の3つではなく2つ。12 dB/オクターブのローパスと、バンドパスです。パネルのレバーでどちらかを選びます。
クジミンは、このフィルターの音は少し荒く、特に低域でそれが目立つと書いています。原因は、制御電流が小さいときにチップの出力段に現れる小さな段差です。そして、当時は欠点だったものがいまは評価されていること、この楽器の攻撃的で太い音と言われるものの多くはこのフィルターから来ていることを書き添えています。
この回路から、2つのことが言えます。ひとつは、積分器の入力が分圧回路の後ろにあって数ボルトで飽和するのに、その手前のミキサーはずっと大きな信号を送れること(ここはベースのチュートリアルで扱っています)。もうひとつは、レゾナンスも同じ飽和したチップを通って戻ってくるので、入力レベルによってレゾナンスのふるまいが変わることです。Duovox はこの両方をフィルターのループの内側で、4倍オーバーサンプリング(HQ では8倍)でモデル化しています。積分器には、カットオフが下がるほど広がる小さなデッドゾーンを入れてあり、これがクジミンの言う段差にあたります。
サステイン 3LP / BP2.7MAXエンベロープ 2.7リードでレゾナンスを上げる
LEAD バンクから The Duovox Scream を読み込みます。VCO I はノコギリ波、VCO II はパルス波で、どちらも 8'、ミキサーはどちらも 6。フィルターは LP で、CUTOFF は 2.7 付近、エンベロープ量 2.7 で1音ごとに開きます。このプレイヤーで動くのは RESONANCE だけです。
このクリップでは、スペクトル重心(明るさのおおまかな目安)が MIN の約2,100 Hz から MAX の6,400 Hz まで上がる一方、平均レベルの変化は0.3 dB でした。たいていのフィルターなら、これだけ強いレゾナンスはミックスの中で数 dB 飛び出してきます。ここでは飽和した積分器が頭を押さえるので、レゾナンスは激しく鳴りながら、自分で自分をリミットします。
リードで面白いのは、つまみの最後の4分の1です。4 より下は明るめのノコギリ波。5 から MAX のあいだでフィルターがひとりでに鳴り始め、弾いている音とせめぎ合うので、1音ごとに少しずつ違う音になります。
叫び
定番の叫びは、この最後の設定に速いフィルターエンベロープを組み合わせたものです。INFERNO パックの Skull Splitter はカットオフを約 1.8 と低めから始め、エンベロープ量 5.1、ディケイ 2.7、サステインは 1 未満。1音ごとにレゾナンスが跳ね上がって、また落ちます。さらにリアパネルの FILTER DRIVE を 100 % にしていて、初期値の 50 % よりもミキサーの信号を強くフィルターに押し込んでいます。
入力が大きいとレゾナンスが抑えられる理由
ほかのアナログフィルターを知っている人ほど驚くのが、このふるまいです。クジミンの承諾を得てこのフィルターのユーロラック版を作った Harvestman は、そのセルフオシレーションを「非常に不安定で、入力の振幅に大きく左右される」と説明しています。マニュアルでは、ミキサーのレベルにスイートスポットがあるので探すように、と勧めています。それより下では発振が単純になり、それより上では発振しなくなる、と。
下のプレイヤーは、まさにそれを聴かせるために作りました。レゾナンスは MAX、カットオフは固定、エンベロープはオフ。VCO II は 0 なので、入るのは A2(110 Hz)のノコギリ波1つだけで、つまみはそのミキサーレベルです。クリップは音量をそろえてあるので、変わるのは口笛と音程のバランスです。
クリップごとに、エネルギーがどこに集まっているかを測りました。ミキサー 0 では、フィルターが585 Hz でひとりでに鳴り、その口笛が出力の98 %。3 でもまだ85 %で、その下にノコギリ波が聴こえます。4.8 では約70 %まで下がります。6 になると自由な口笛は消えます。585 Hz には何も残らず、いちばん強い成分はノコギリ波の第5倍音にあたる550 Hz で、エネルギーの44 %を占めます。そして110 Hz の基音が、ゼロからはっきり聴こえる大きさまで出てきます。レゾナンスは自分で鳴るのをやめ、入力音の倍音に張り付いたわけです。
この張り付きは、オリジナルにも実際にあるふるまいです。校正に使った実機の録音では、フィルターをスイープしているあいだのほとんどで、レゾナンスが入力の倍音に乗っていました。Duovox も入力に比例して同じことをします。張り付いている時間はスイープ全体のうち、ミキサー 3 で約14 %、4.5 で45 %、6 で56 %です。
叫びが詰まって聴こえるなら、レゾナンスを上げる前にミキサーを下げてください。ミキサー 3 から 4、レゾナンス MAX 付近なら、レゾナンスは入力音に逆らって自分で鳴り続けます。ミキサー 6、レゾナンス MAX 付近なら、レゾナンスが音程に固定された、密度の高い歪んだ音になります。ベースやリフには、むしろこちらが合うことが多いはずです。
フィルターをオシレーターとして弾く
ミキサーで2つのオシレーターを 0 に、レゾナンスを MAX にします。Duovox はフィルターにごくわずかなヒスを流しているので、発振は勝手に始まり、フィルターは頭の平たいサイン波のようなオシレーターになります。測定した実機では第3倍音が基音より15から22 dB 下にあり、Duovox は14から19 dB。ピッチはつまみの位置から1 %以内に収まります。
カットオフ = 音程MAX00オリジナルにはフィルターのキートラッキングのつまみがなく、トラッキング量は内部で固定されていました。Duovox ではこれをリアパネルの KEY TRACK にしてあり、初期値は 62 %。サンプリングした実機で測った値の中央値です。62 %では、鍵盤を上に弾いていくほど口笛の音程がずれていきます。100 %にすると鍵盤にぴったり付いていき、口笛系のプリセットはこの設定になっています。Formanta Whistle は CUTOFF を 2.7 にしていて、口笛は鍵盤のほぼ2オクターブ上、4分の3半音ほど低めに鳴ります。Ghost Sine は 2.1 で、鍵盤の1オクターブ上、C3 から G5 まで数セント以内の精度で合っています。
ここではつまみがトランスポーズの役目をします。1.8 から上は、0.6 回すごとに口笛がおよそ1オクターブ上がります。曲に音程が合う位置を選んでください。2.1 あたりで1オクターブ上、2.7 あたりで2オクターブ上の近くです。
Duovox ではキートラッキングがグライド中のピッチにも付いていくので、口笛にもグライドが効きます。どちらのプリセットも、音と音のあいだのスライドにグライドを使っています。押さえた2つの鍵盤のあいだで口笛が鳴るデュオフォニック版は、デュオフォニックとグライドで扱っています。

ローパスか、バンドパスか
RESONANCE の下のレバーで出力を選びます。LP はカットオフより下をすべて残し、上を12 dB/オクターブで削ります。BP はもう一方の積分器の出力を使い、カットオフの両側が6 dB/オクターブで落ちていきます。オリジナルではレバーの下に ФНЧ(ローパス)と印刷され、横の小さな特性図にバンドパスの形 ПФ が描かれています。
BP3.34.2BP にすると音の下のほうがなくなり、カットオフのまわりに鼻にかかった、声のような帯域が残ります。下のプレイヤーで BP Nasal Lead を LP から BP に切り替えると、220 Hz の基音はエネルギーの約5分の1から1 %未満に下がり、重心は1,700 Hz から2,500 Hz に上がり、レベルは4 dB 下がります。切り替えるときは少し音量を上げるつもりでいてください。
レゾナンスを 3.5 から 5 のあいだにして BP でカットオフを動かすと、母音のように聴こえます。ファクトリーバンクではこれをいくつかの形で使っています。帯域を固定して鼻声のリードに、周期的なエンベロープで1音ごとの「ワウ」に、サンプル&ホールドのモジュレーターでランダムなおしゃべりに。
BP は、ノイズから作るドラム(ファクトリーバンクのスネアやハイハットが使っています)や、ベースを覆い隠さずにミックスの上に乗る、帯域を絞った電話声のようなリードにも向いています。
エンベロープがカットオフをどう動かすか
オリジナルでは、カットオフの電圧がリニアな電圧・電流変換を通って2つのチップに入ります。回路図から読み取れる限り、エンベロープとモジュレーターはカットオフにオクターブ単位ではなく、ヘルツ単位で足されることになります。音域の下のほうの1オクターブはエンベロープ数十ヘルツぶん、上のほうの1オクターブは数千ヘルツぶん。そのためエンベロープのアタックは低いオクターブをほぼ一瞬で通り過ぎて、ほとんどの時間を上の1、2オクターブで過ごし、ディケイは高いところにとどまってから、最後に下を一気に落ちていきます。
Duovox も初期設定ではこの動きです。CUTOFF つまみ自体は約30 Hz から18 kHz までのオーディオカーブで、その上にエンベロープ、モジュレーター、ベロシティがヘルツ単位で足されます(キートラッキングはその結果をスケーリングします)。多くの現代のシンセのような、おなじみの動きがよければ、リアパネルの EXPO CUTOFF をオンにしてください。エンベロープとモジュレーターがオクターブ単位でカットオフを動かすようになります。
フィルターは、この楽器の半分です。残りの半分は、それを動かすもの。ループするエンベロープはカットオフをリズムに変え、ベースのチュートリアルはセクション03の熱いミキサーをわざと使っています。

- 1982年のパネルをつまみ単位で完全再現。フィルターの叫び、ループするエンベロープ、デュオフォニックも
- 2チップ・フィルターを4倍/8倍オーバーサンプリングでモデル化し、実機の録音で校正
- 10バンクと5パックに257プリセット、ベースやリードやスクリームを作る GEN ボタン
- 1982年の実機にはない機能も:ポリモード、ベロシティ、ピッチベンド、ドリフト、リアパネル