Polyvox(Polivoks/Поливокс、ポリヴォクス)にはオシレーターが2つあり、それが1つの鍵盤を追うか、2つの鍵盤を追うかをスイッチで決めます。2-voice モードなら、左手でベースの音を押さえたまま、右手でその上にラインを弾けます。ただし2つの音は、やはり1つのフィルターと1組のエンベロープを通り、グライドするのは片方だけ。この制約こそが、この楽器のデュオフォニックな音の出どころです。
このページではまずルールを説明し、それを私たちの再構築版 Duovox で弾いていきます。スクリーンショットはすべてプラグインのもの、プレイヤーはすべてプラグインのレンダリングです。2つの鍵盤を同時に押さえる、というのはレンダリングでは単に音を重ねているだけで、ピアノロールで音を重ねるのと同じです。
2-VOICEグライド 3.7VCO I · 上の鍵盤VCO II · 下の鍵盤上の鍵盤は VCO I、下の鍵盤は VCO II
ウラジーミル・クジミンはこの楽器についての記事(ロシア語)でこの仕組みを説明しています。ジェネレーターはそれぞれ自分の音を追い、片方は押された上の鍵盤、もう片方は下の鍵盤を担当する。だからオシレーターはちょうど2つで足りた、と。どちらがどちらかは書いていません。ロシア語版 Wikipedia は1つ目のジェネレーターを上の鍵盤としており、Duovox もそれに従っています。VCO I が押さえている中でいちばん高い鍵盤を、VCO II がいちばん低い鍵盤を担当します。3つ押さえると、真ん中の音は無視されます。
スイッチはマスタープレートにあります。オリジナルの表記は 1-ГОЛ. / 2-ГОЛ.(1声/2声)。Goldfrapp の Will Gregory は2003年の Sound On Sound のインタビューで、これをキリル文字をラテン文字として読んだ「1-Ron/2-Ron」と呼んでいます。Duovox では 1-VOICE と 2-VOICE です。
1-VOICE / 2-VOICEグライドオシレーターより後ろは、すべて共有です。2つの音は同じ MIXER、同じフィルター、同じアンプを通り、2つのエンベロープはどちらの音でも動きます。Reid も同じ記事でこうまとめています。オシレーターは別々に弾けるけれど、信号経路は1本なので、音を個別に形作ることはできない。Duovox では新しい鍵盤を弾くたびにエンベロープが始まり直す(リアパネルの LEGATO がオンでない限り)ので、メロディの音を弾くと、その下で押さえているベースの音も発音し直されます。フィルターのキートラッキングは、2つの音程の平均を追います。
下の鍵盤を押さえたまま上の鍵盤を離すと、ARP Odyssey や 2600 と同じように、VCO I は下の音まで落ちてきます。グライドが上がっていれば、その落ち方はスライドになります。
同じフレーズを1声と2声で
CLASSIC バンクの Two-Hand Duet は、まさにこのための設定です。VCO I は上の鍵盤用に 8' の矩形波、VCO II は下の鍵盤用に 16' のノコギリ波。下のフレーズは、左手が A3、続いて F3 を押さえ、右手がその上でメロディを弾いています。
8'矩形波16'ノコギリ波このレンダリングで、オシレーターごとのピッチを追跡してみました。1-voice モードで初期設定のキープライオリティだと、2つのオシレーターはずっと左手の音にとどまり、メロディは一度も鳴りません。聴こえるのは、右手の鍵盤が押されるたびにエンベロープが始まり直すところだけです。プライオリティを最後に弾いた鍵盤にすると、右手の鍵盤が押されているあいだは2つのオシレーターがメロディへ飛び、ベースはすき間でしか聴こえなくなります。2-voice モードでは VCO I がメロディを、VCO II がベースを弾き、どちらも同じフィルターを通ります。
1-voice モードで2つの鍵盤を押さえたときにどちらが優先されるかは、回路図からは決められません。Duovox の初期設定はいちばん低い鍵盤で、デュオフォニックのキースキャナーから自然に出てくる動きです。これなら、押さえているベースが通りすがりの高い音に切られることもありません。リアパネルの LOW NOTE スイッチで、最後に弾いた鍵盤の優先に変えられます。

スライドするのは上の声部だけ
クジミンは、ポルタメントは 1-voice モードでは両方のジェネレーターに、2-voice モードでは片方にだけかかると書き、その効果を、ギターの弦を1本引っぱって隣の弦の音まで上げることにたとえました。Reid は同じことを反対側から指摘しています。グライドのつまみは VCO1 にしか効かず、そのおかげで変わった効果がいくつか出せる、と。Duovox はどちらの記述にも沿っていて、1-voice モードでは GLIDE が2つのオシレーターを動かし、2-voice モードでは VCO I だけを動かします。
LEAD バンクから Duo Bend Lead を読み込みます。2-voice、VCO I はノコギリ波、VCO II は矩形波、どちらも 8'、グライドは 3.7。プレイヤーでは左手がずっと A3 を押さえ、右手がその上を歩いていきます。動かしているのは GLIDE だけです。
グライドは RC のカーブで、最初が速く、目的の音に近づくほどゆっくりになります。大きな音程でも、小さな音程より少し長くかかるだけです。最初の上行跳躍(5度)で、VCO I が目的の音から半音以内に収まるまでの時間を測りました。MIN では実質的に一瞬、1.8 で0.02秒、2.7 で0.06秒、3.3 で0.1秒、3.7 で0.16秒、4.5 で約3分の1秒、5.4 で0.8秒。クリップのあいだ、VCO II はずっと A3 のままでした。右手の音と音のあいだで起きていることにも耳を向けてみてください。上の鍵盤が一瞬離れると VCO I が A3 へ向かって滑り落ち始め、次の鍵盤がまた引き上げます。グライドが長いと、このくぼみがラインの一部になります。
もっと大きくベンドさせたいなら、EXPERIMENTAL パックの Bent Interval がグライド 4.5 を使っています。1-voice モードでは同じつまみが2つのオシレーターにかかる普通のポルタメントになり、ベースのチュートリアルではそれをスライドに使っています。
レゾナンスの効いたフィルターに2つの音
2つの音がフィルターを共有しているので、レゾナンスの効いたフィルターは、押さえている音程に反応します。Screaming Duo は2つのオシレーターをノコギリ波で全開にし、レゾナンス 5.4、リアパネルの FILTER DRIVE を 90 %にしています。左手は A3 を押さえ、右手はその上で5度、トライトーン、短2度の順に弾きます。
LP2.55.43つの中でいちばん安定しているのは5度です。短2度の A3 と B♭3 は220 Hz と233 Hz で、2つはその差、1秒に約13回のうなりを生みます。レンダリングのレベルには0.073秒の周期が見つかりました。このうなりが飽和を通り抜けて残っているわけです。明るさは音程が狭くなるにつれて少し下がり、スペクトル重心は5度の約2,500 Hz から短2度の2,300 Hz になります。
今度は5度を押さえたまま、レゾナンスだけを回してみます。重心は 1.8 の約1,250 Hz から MAX の3,700 Hz まで上がり、レベルの変化は0.3 dB 以内。1音のときと同じ、自分で自分をリミットするふるまいです(理由はフィルターのチュートリアルで説明しています)。
INFERNO パックの Phrygian Duo は、短2度を1つの鍵盤で鳴らします。VCO II を半音上にデチューンしてあるので、鍵盤1つでぶつかる響きが出ます。2つの鍵盤で弾くと、下の音が上の音の下で半音高く鳴るので、弾く音程はどれも半音ぶん狭くなります。
2つの鍵盤のあいだで鳴るフィルター
フィルターのキートラッキングは2つの音の平均を追うので、もうひとつ技があります。EXPERIMENTAL パックの Whistle Between は、ミキサーで2つのオシレーターをオフにし、レゾナンスを MAX にしてフィルターをひとりでに鳴らし、リアパネルの KEY TRACK を 100 %にしています。2-voice モードでは、口笛が押さえた2つの鍵盤の中間点の1オクターブ上で鳴ります。
ピッチトラッカーで確かめました。C4 だけなら口笛は C5。右手で C5 を足すと、中間点 F♯4 の1オクターブ上、F♯5 に移ります。G4 なら、5度の真ん中には半音がないので、D♯ と E のあいだの4分音に落ち着きます。E4 なら D5、A4 なら E と F のあいだ。片手を押さえたままもう片方の手を動かすと、指の動きの半分だけ動くメロディになります。説明するより聴いたほうが早いはずです。
1台でベースとリード
定番の使い方は、このハードウェアがもともと想定していたものです。1台のシンセで、左手でベースライン、右手でリード。ファクトリーバンクにはそのためのプリセットが7つあります。どれも VCO II が下の鍵盤を担当し、うち3つは 16' で1オクターブ下に置いています。プレイヤーでは、セクション02の両手のフレーズを7つすべてで鳴らしています。
和音が必要なら、Duovox のリアパネルには2から8ボイスの POLY モードがあります。各ボイスがフィルターとエンベロープを持った楽器まるごとのコピーで、オンのあいだはフロントパネルのスイッチは関係なくなります。デュオフォニックのラインの下でよく合うループについては、ループするエンベロープをどうぞ。

- 1982年のパネルをつまみ単位で完全再現。フィルターの叫び、ループするエンベロープ、デュオフォニックも
- 2チップ・フィルターを4倍/8倍オーバーサンプリングでモデル化し、実機の録音で校正
- 10バンクと5パックに257プリセット、ベースやリードやスクリームを作る GEN ボタン
- 1982年の実機にはない機能も:ポリモード、ベロシティ、ピッチベンド、ドリフト、リアパネル